How to dream of my beautiful dreamer

インセプション』は『アバター』と同じく「もっとこれ見てたいんだけど映画」だと思った。『アバター』は3D眼鏡と演出で客が「観終わりたくない」世界を作り上げて、『インセプション』は題材と構造で終わった後も客を映画見心地にさせているわけね。あるいは、『アバター』が「映画の観客の映画」だとすると『インセプション』は「映画の作り手の映画」なのかもしれない。夢邪鬼ことノーランが「今後も映画(夢)作っていくんで観たってや!」って言ってる感じ。
で、この夏はもうひとつ「もっとこれ見てたいんだけど映画」が公開されていたのをご存知でしょうか。
そう、『ヒックとドラゴン』(How To Train Your Dragon)です。
なんだか一部にやたらとリピーターがいる映画らしく、2ch映画作品板の該当スレでは十回以上観たというレスもいくつも見られました。
北欧が舞台のファンタジー映画ですが、「現実」から向こうへジャック・インするわけでも描かれる世界が特別蠱惑的でもない。いや、主人公ヒックという「弱い男の子」を疎外しつつもその成長を成功に結びつけてくれる単純さや最終的に彼が起こす変革を受け入れる度量をもつ「バイキングの村」という舞台は魅力的といえば魅力的ですが、それがリピート観賞を誘うのでしょうか。ヒックのシニカルかつユーモアある語り口、内省的だが行動を恐れない性格には惹き付けられますがそれが要因でしょうか。めちゃめちゃ情報量の多い光の加減と質感の表現や、デフォルメの効いたキャラクターの表情豊かな演技でしょうか。
いいえ、トゥース(toothless)です。
というわけでヒックの相棒(バディ)にしてトレーニーにしてトレーナー、みんな大好きプリティ・ラブリィ・リップテイルことトゥースの非実在にして実在感ありありの魅力を語る段と相成るわけですが、私は特段に動物好きというわけでもなく、制作者がトゥースをドラゴンでありながらペットに見えるよう姿や仕草を犬猫に取材しているとか言われてもその企みを指摘すること適わず、ただ愛らしいと思うだけであります(あと『リロ&スティッチ』見てないからスティッチに似てると言われてもわからない)。ただ、見ていてひとつ気づいたのは、トゥースの初登場時、ヒックとトゥースが互いに互いを殺しかけて思い止まるというシーンで、トゥースの黒目は細くあってまるまっこいツラを凶相に見せているのに対して、次にヒックとトゥースが逢い見るときには(トゥースの顔を正面から見るショットでは)黒目が若干太く見えて、いかにも仲良く出来そうな動物感を出しているのですね。この時点では当事者たちの関係構築はまだこれからですが、この落差でもう見ている方はメロメロなわけです。まあ普通に考えたらはえーよってところですけど、邦題も「ヒックとドラゴン」なんだし仲良くなるのはわかってるんだから、その過程をいかに密度高く描写するかがポイントと考えれば、ペット感をさっさと画で見せちゃうのは正解でしょう。ドラゴン思ってたより人に懐くんよ、って話の筋だし。
それにしても、 http://howtotrainyourdragon.wikia.com/wiki/How_to_Train_Your_Dragon_Wiki の現実に会いたいキャラだれよって質問のぶっちぎりトップがトゥースで、思わず笑ってしまった。いや、俺もトゥースに会いたいよ。会いたいよー。
あと蛇足だけど、ピクシブの「ヒックとドラゴン」タグが盛況なのは当然ですが、日本での公開以前から「ヒックとドラゴン」「HTTYD」タグ付きのファンアートが投稿されているのを見て、ピクシブってワールドワイドwだなwww、とあらためて思ったw。