カナスピカ( asin:4062138573 )読了

秋田禎信待望の新作、1年ぶりの書き下ろし、一般文芸進出第一作は、驚くなかれ、がっちんジュブナイルだった──でお馴染のカナスピカを読了いたしました。
文体があっさりめなのは、主視点人物が中学生だからですね。少女が主視点人物といえばエンジェル・ハウリングのフリウ篇ですけど、エンハウで、ミズー篇とフリウ篇を比べると明らかにミズー篇の方が文体がこってりだったのは、書き下ろしと連載の違いというよりも、視点人物の違いを意識して書き分けていたことによるのかな。
秋田が文体の書き分けに意識的だとすると、俄然読みたくなるのが三十代男性が主人公の小説だよねえ。つまり、秋田禎信と同世代のキャラが視点人物になるわけ。それはもはや「おっさんのタマゴ」なのかそうではないのか。*1
秋田禎信って、以前何かのインタビューで「あまり先のことは考えて書いてない」みたいなこと*2を言っていたような気がするけれど、今回はどうなのだろう。わりとカチッと決めて書かれたような。そうでもないかな?
では以下、完全に作品の内容に触れますのであしからず。


中坊が携帯電話を持ってて当然みたいな舞台設定(現代っぽい)なのに、公立中学校が学校週五日制じゃないっぽいのは、なんか叙述系のトリックがあるからだと思ったけどそうじゃないの? あれ、なんか嫌な予感。誤読してる?
完全週休二日になったのが2002年4月で携帯電話とPHSを合わせた普及率が固定電話の普及率を追い越したのは2000年らしいんだよなあ。微妙。微妙って言うか、別に深く考える問題でもないか。
それと、この作品は、カナスピカによる一人称の文章が最初と最後、プロローグとエピローグのような形で記述されているのだけれど、これはもしかして、本編はカナスピカの記録をロードしているという形なのかな?


つづき

*1:と、よく考えればそれって閉鎖のシステム(asin:482916123X)ですわね。主人公が三十代。でもあの話、視点人物ころころ代わりングストーリーだったわりに、文体の書き分けはそれほどされてなかったような。まああれは詩集だからな(ええー)。

*2:10ページ先のことは考えないって言ってたのは……森博嗣だったか。