映画版バッテリー(滝田洋二郎監督)を見る

この映画について、わたしは賛否いずれの意見も聞きたくない読みたく見たくない、です。原作信者の「ここが原作と違う!」的批判も、原作未読者の「原作は読んでいないんですが〜」が枕の感想も、シャットダウンします。耳を塞いでわーわー言います。
原作再現という意味では結構良い線だと思うのですよ。つまり、林遣都が完全に原田巧だと。青波にも、角川文庫版の書き下ろしで付けられた描写を上手くまぶしてある。映画にする上でのリミックスも、悪くないというか、むしろ良いんですよ。吉貞の役割を沢口に移した手際とか、冒頭の大会シーンの意味付けとか。しかし……せめて上映時間を二時間三十分にすれば、海音寺キャプテンも活躍したのかなあ、とか、吉貞も吉貞として出られたのかなあ、とか、展西さんにももう少しフォロー入ったのかなあ、とか、色々思うところがあるですよ。
つまり、物足りない。もっと丁寧にやって! と。でもそれをやるには二部作とかにしないといけないわけですが、そこまでやるほど原作に(映画に出来るほど)エピソードはない。テレビの連ドラだったら良かったのかなあ、とかなんとか、つまりつまり、良くある言い回しになってしまうのですが、何が間違っていたかというと企画自体が……という話になるのですね。

まあそれはそれとして

林遣都くん(くん付けって)は本当にカッコいいなあ。顔アップとか素敵すぎる。原作で瑞垣はちょいちょい巧のことを「マヨネーズかけて喰っちゃいたい」と評すわけですけど、林くんは正にそんな感じですよね。
中学一年生かっていうと本当にギリギリで、登校シーンとか、「ひとりだけ高校生っぽくて浮いてる」のと「孤高の天才かつ美形だから浮いてる」のが混然としていて面白い。
結局、わたしがこの映画の何が気に喰わないのかと言うと、もっと林遣都の原田巧を観ていたいんだけど、あらゆる意味で続編は無理、というところなのかもしれません。今作で原作のエピソードをやり尽くしてしまった、ということもあるし、一年後や二年後、林遣都にはもう原田巧を演じることは出来ないだろう、ということもある。誰が悪いわけでもない。悪いとすれば、少年を否応なく大人にする、非情な時間、残酷な神の手管。少年愛者の絶望と言われている奴ですね。言われねえよそんなの。

というわけで、わたしが何を望むかと言えば

これから一週間で続編を作ってくれないかなあ(無理です)。今なら、まだかろうじて間に合う!
あるいは、スピンオフ作品として、 OTHER BATTERY こと横手二中の幼なじみバッテリーのお話を映画化してほしい。これなら、原作といえる原作はほとんどないので、あれもやってほしいこれもやってくれ、と物足りなくなることもないし、原田巧は強大な敵として描かれることになるので、成長した林くんでも良い、というかむしろ「完全に中学生じゃねえよー」ってくらい成長した林くんの方が良い(今作で門脇瑞垣が、特に瑞垣が完全におっさんだったように)。

まとめると

結局、わたしはこの映画を観るべきじゃなかったのかもな、みたいな気分になってきたのだった。